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No Nuclear Power Plant
ブラジルシンドローム
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 福島第一原発事故後、政府や東電職員さん、原子力安全委員会さん、保安院さん、御用学者と呼ばれる方、その他関係者からの対応を考えますと、 そもそも定義があいまいでごまかされ感満載の情報ばかりで、そう思った時点で「安全であるはずがない」と思ってしまいますよね。 その辺りのことをまとめてみたいと思います。
  • 圧力容器の温度が100℃以下だと言うが、炉心(核燃料)は圧力容器にはない
  • 炉心の状態がまだ分からないのに工程表がよくも組めるもんだ
■冷温停止はもうあり得ない
図:原発の仕組み  「冷温停止」というのは運転中の原子炉を停止したときに、正常に機械が作動して、冷却水温が100℃以下になり安全な状態で停止した状態をいうそうです。 つまり、原発が事故を起こして機械が正常に動作し得なくなった時点で「冷温停止」というのはもう意味をなさないということです。 福島第一原発の場合、事故を起こし、原子炉内の冷却水位が下がり、空焚き状態になってメルトダウンして、さらにメルトスルーしてしまっているわけですから、 現在、工程表で目指している年内「冷温停止」というのは状態としてあり得ないということです。これをずっと言い続けているのは、事故発生当初から、 もっと言えば事故以前からある、電力会社とさらに言えば電力行政の改竄体質、隠蔽体質が今も続いているということを彼ら自ら証明しているようなものだと思います。 百歩譲って、工程表で目指しているところが「冷温停止」と言い続けるなら、その「冷温停止」がどのような状態を指すのか、別の言葉で、しっかり定義して公表しなければならないと思います。

運転中の原子炉の写真 【冷温停止】
 左は運転中の研究炉の写真です。青く光っているのは核燃料から出ている中性子が水の分子と衝突した時に出る光だそうです。なんだか不気味な感じがしますね。 核燃料は自ら高熱を出しています。その熱は鉄も簡単に溶かしてしまうほど高くなります。ですから常に冷やしていないと炉心はその構造を維持できなくなります。 原発の冷却機能が停止すると核燃料自身の熱で収めている燃料棒を溶かして水あめのようになって炉心内部に崩れ落ちて手が付けられない状態になります。これがメルトダウンです。
 原子炉を停止する場合は、まず制御棒を入れて中性子の動きを止めて核分裂反応を起こしにくくします。それでも核燃料は熱を出し続けていますから、 冷却水は止めることなくずっと冷やし続けていきます。そして水温が100℃以下になってはじめて「停まった」ことになります。 でも核反応が止まっているわけではありませんから「停まった」ことにします。本当に停まったわけではありません。だから「停止」という言葉の前にご丁寧に「低温」というお断り書きを付けているんです。
 原発報道で全国の原発の中で「現在停止中」になっている原子炉がありますが、電気を作っていないというだけで、核分裂反応が止まっているということではありません。冷却装置はずっと作動しています。 放射能の心配から解き放たれるのは、すべての原発を停止(冷温停止)しただけではダメで、しかもそれは私たち世代が生きているうちには無理で、何世代も時間を経たその先ということになります。
■メルトダウンを認めなかった
写真:1号機の爆発  1号機が水素爆発を起こしたとき、私は尋常じゃないことが起こってると感じました。そのとき保安院さんは「メルトダウンは考えにくい。」とコメントしました。 記者の方が「核燃料棒が溶けたことをメルトダウンというのではないですか?」と質問したとき、「核燃料棒が溶けて圧力容器の中に溜まる状態をメルトダウンといいまして、 核燃料が溶けただけの状態はまだメルトダウンとは言わない。」と答えていたと記憶しています。核燃料棒は溶けたかも知れないが、圧力容器に溜まるような状態ではない… つまりメルトダウンではない…と言いたかったのだと記憶しています。ローソクがその火の熱で溶ければ、下へ落ちていきます。溶けたロウはまだ上に溜まったままだと言うのです。 あの建屋が吹き飛ぶほどの爆発の中で…です。私は信じませんでした。
図:メルトダウン  この時点で保安院さんの言うメルトダウン(核燃料が溶けて圧力容器に溜まった状態)にあることを指摘する専門家の声もありましたが、保安院さんも国もこの声を排除しました。 しかし実際にはメルトダウンしていたことをあとで認めることになりました。
 核燃料を収めている燃料棒…被覆管といいますが、それ自身が高温状態になると水(H2O)から酸素を奪い(ZrO2)、水素(H2)ガスを作り出すそうです。 福島第一原発1号機のような軽水炉では、核分裂による放射線によって水を酸素と水素を発生するそうです。 いずれにしても水素爆発で建屋が吹っ飛ぶような深刻な状態にあったにも関わらず、「圧力容器は頑丈に出来ていますから、壊れないです。」「格納容器に守られていますから。」 といい続けたのは、住民を避難するための手立てなど、何も手を打たない理由付けに過ぎなかったのではないかとさえ思ってしまいます。 あの爆発で、もし格納容器が壊れたら、圧力容器が壊れたとしたら、すぐに対応できるような手立てがなかったところに、原発システムの安全性に私は疑問を持つようになりました。 何より、事故を起こした原発がどうなっているのか、いまだに確認することすら出来ないのですから・・・。
■ブラジルシンドローム?!
図:メルトスルー  1979年3月16日にアメリカで公開された映画「チャイナシンドローム」は、原発がメルトダウンを起こすと、融解した核燃料は地殻をも溶かす高熱を出し、その重みで地球の底(アメリカの反対側)の中国に達するのではないか… という登場人物の言葉がそのままタイトルになった原発事故を描いた映画でした。スリーマイル島原発はその12日後の1979年3月28日に映画をそのまま再現するような事故を起こしてしまいました。 このとき溶けた核燃料は圧力容器内にとどまりチャイナシンドロームの心配には至らなかったようですが、そこから取り出せるようになるまでに10年以上もかかったといわれています。
 一方、福島第一原発の1号機は圧力容器を溶かし(メルトスルー)、建屋の底と言いますから格納容器も貫通してひょっとすると建屋からも漏れ出ているのではないかと言われています。 日本の裏側にはブラジルがありますから、ブラジルシンドロームと呼ぶことになるのでしょうか。
図:ブラジルシンドローム  この点について東電、政府側は、圧力容器内(もしくは建屋内)にとどまっていると説明していますが、これまでの経緯があるので信用できないですよね。そもそも、まだ炉心がどうなっているのか確認できていないのですから、東電の都合の良い推測に過ぎないと言えます。 もし、建屋内にとどまることができなかった核燃料はどうなるのでしょうか。メルトダウンしてしまった核燃料は、マグマのように熱く、また核種は重いものですから、触れるものをすべて溶かしながら、地球の中心に向かって落ち込んでいくことになります。 核燃料は水に触れると燃料としての働きを始めますから、地下水に触れると核分裂反応(再臨界)を起こして、熱を供給してその勢いを増していくことになります。 こうなるともう止められなくなります。もっとも地球の裏側に出て行くことはないですから、最悪でもブラジルシンドロームにはならないのですが…。 問題なのは、こうした事態に福島第一原発が陥っているかも知れないという心配があることと、東電も政府も、マスコミも、うそ、ごまかしから一向に抜け出さないでいると見えることです。 この状況は、ある意味、ブラジルシンドロームより深刻だと思います。
2011年10月16日 赤沢富士男

写真はGoogle画像でかき集めたものです(^^A;
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