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No Nuclear Power Plant
地層処分が安全と思えない
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核燃料(ペレット)  使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)の処理については、その方法(地層処分)は決まっていても肝心の処分地が決まらないということで、 最初の原発を稼動を始めて40年以上経つことを考えると、そのことだけでも問題だと思うのですが、高レベル放射性廃棄物の処分について調べてみると、 本気で処分できると思っているのだろうか…と、心配になってきましたので、はっきり言ってとても安全とは思えませんので、少し長くなるかも知れませんが書いておこうと思います。
■地層処分とは...
図:地層処分の説明  使用済みの核燃料は、原発施設内のプールで数年から10年冷却します。その後ガラスで固められます(ガラス固化体)。 ガラスにするのは遺跡から出土したガラスがほとんど当時のままであるように、ガラスは非常に安定しているからです。ガラス固化体はさらにオーバーバックと呼ばれる鋼鉄製の容器に入れられます。 この容器は腐食しにくく頑丈な炭素鋼でできていて1,000年間、水の浸食からガラス固化体を守るそうです。
図:高レベル放射性廃棄物の冷却保管施設 ガラス固化体はまだ熱を出しますので、専用の冷却施設でさらに30〜50年間保管します。そのあと地下300m以上の地層に埋めますが、そのとき緩衝材という粘土のような物質でさらに囲みます。 緩衝材は水を通しにくく、水を含むと少し膨張する性質のものを使うそうです。万が一、ガラス固化体が溶け、放射性物質がオーバーバックから漏出し、緩衝材からも漏れてしまったとしても、 安定した深い地層では地下水の流れもゆっくりなので、放射線が地上に到達しても、影響は大きくないだろうということです。
■プルトニウム239の核崩壊
 100万kW級の原発が必要とする核燃料(3%濃縮ウラン)は30t(トン)だそうです。核燃料を使用する前の割合は、ウラン238が29.1t、ウラン235が0.9tです。 燃えたあとは、ウラン238が28.5t、ウラン235が0.3t、プルトニウム239が0.3t、生成物が0.9tになります。生成物には、セシウムやストロンチウム、ヨウ素などが含まれます。 これをそのまま処分すると考えると、プルトニウム239がウラン235に変わり、さらに安定した核種になるまでに半減期で考えても7億年以上かかることになります。
プルトニウム239の核崩壊
ヨウ素135(135I)の崩壊
核種 半減期
135I 6.5時間
135Xe 9.1時間
135Cs 230万年
135Ba 安定
 一方、生成物にも崩壊する過程で放射線(と熱)を出します。自然崩壊と違い、中性子を受けて起こる核分裂反応では、いろいろな核種が生じます。 一例として、イットリウム99(99Y)とヨウ素135(135I)に分裂した場合は、それぞれが不安定ですので、イットリウム99の場合はルテニウム99(99Ru)で安定するまで半減期で約21万年、 ヨウ素135の場合はバリウム135(135Ba)で安定するまで半減期で230万年を要します。
 放射性同位元素は半減期が短いほど強い放射線を出しますので、地層処分するまでに数十年冷却期間を設ければいいという考えのようです。
■天然原子炉
図:オクロの天然原子炉  中央アフリカにあるガボン共和国のオートオゴウェ州オクロという場所に、いまから約20億年前に100万kW出力に相当する核分裂反応が数十万年間続いていたことが分かっています。 その頃はまだウラン235(235U)の割合も3%程度と高かったことと、当時の地球の状況、水や酸素といった条件がうまく合い、水に溶け出したウランが流れの中で沈殿して核燃料を作ったと考えられています。 その天然原子炉の大きさは数cmから数mで、数百度の温度に達していたと考えられています。もちろん発電はしていません。核分裂でできた生成物がウラン鉱床の中で、 20億年経っても数cmしか動いていないことが分かり、そのことが現在の地層処分の根拠になっているようです。
■私の不安
時間的スケールがデカ過ぎる
図:類人猿の骨格  まずは、何よりこれ(時間的スケールがデカ過ぎること)に尽きますよね。使用済み核燃料を地層処分にする前段階で、人の一生に相当するような時間をかけるわけですし、 ウラン235の濃度が1%に下がったからといって、数十万年も働いていた自然原子炉の何倍もある量を地下に埋めるだけで大丈夫なんだろうか…という不安です。 プルトニウムやウランだけでなく半減期の長い核種(99Tcは21万年、135Csは230万年など)も多く含んでいます。半減期が長いものは放射線量も少ないので、 一度地層に埋めたものについては放置する考えのようですが、天然原子炉が数十万年も燃え続けたことを考えると、燃料濃度が十分薄いとしても、まったく発熱がないとも言えないと思いますので、 当分の間の監視は要るような気がします。天然原子炉がスタディーケースになるといっても、それは万年単位の話になるのではないでしょうか。
 ちなみに、現人類(ホモ・サピエンス Homo sapiens)が現れたのは20万年前です。
実験的な要素がある
 その時間的スケールのデカいことを解消する目的で、半減期の長い生成物に中性子を当てて核分裂させて、半減期の短い核種に変える研究がなされているようです。 このとき当然、莫大な核分裂エネルギーとともに、たくさんの放射線が発生することが考えられます。
図:プレートの境界  そもそも、高レベル放射性廃棄物を含むガラス固化体がどれだけ安定なのか当然のことながら確かめられたわけではありません。 ガラスや炭素鋼がいくら安定しているといっても、放射線は物質の性質(核種)を変えてしまう能力を持っています。本当にずっとその形状を保ち続けられるのでしょうか。 日本列島は4つのプレートが交差する上にある地球上でもトップクラスの地震大国にあって、地層処分がどれだけ有効なのか、オクロとはまったく違うような気がするだけに、正直不安を感じます(ちなみにオクロはでっかいアフリカプレートのプレート境界より内側に位置しています)。
 他には、核分裂生成物からウラン235やプルトニウムを取り出して再び核燃料として再利用しながら、前述の核種変換(半減期の短い核種にする)や高価金属の白金類やレアメタルの抽出なども検討されているようですが、 何をするにも放射性原料を扱うことになりますので、放射能汚染を考えた対応や対策の範囲が広がる不安も感じます。
 「実験的な要素」と書きましたが、新しい技術を始めるのに、数万年も待てないのも事実ですから、それを実験的と書かれるのは開発に携わっている方には心外だと思います。 ですが、急ぎすぎたのではないかと感じます。あまりにも「やってみないと分からない」「やりながら解決していく」事柄が多過ぎるような気がします。
 ちなみに核分裂生成物から、60Coや137Cs、99mTc、131Iが取り出され、医療の分野にすでに利用されていることもあるようです。
事故の被害が甚大
福島第一原発事故の写真  チェルノブイリ原発の事故(1986年4月26日)から25年経って福島第一原発の事故(2011年3月11日)が発生しました。「2度あることは3度ある」と言いますが、これから先、もうこのような大きな事故は起きないという保障はありません。 福島第一原発の場合は未曾有の自然災害がなければ起こらなかった事故という見方もあります。その通りだと思います。ただ、原因はともかく、 ひとたび重大事故を引き起こしてしまうと時間的にも空間的にもとてつもない被害に発展してしまうことを、両事故は見せ付けています。 こうした報道に上がってこない事故のなかでも、死亡者や被曝者が出た事故記録が少なからず出てきます。被曝を伴わない事故については、当然ながらぐっと増えてきます。 その中には、捏造や隠蔽していたことが後に発覚した…なんてものも多数含まれています。
死の星のイメージ図  原発の安全神話は完全に崩れたと思います。同じことが、高レベル放射性廃棄物の処分方法についても言えてしまうのではないかと思ってしまうのです。 深さ300m以上の地層で想定外の地割れが発生し、破損した容器が予想を越えて高温を発っしガラス固化体を溶かし、さらに炭素鋼も溶かし、 比重の重い元素がうまく集合し、地中に天然原子炉を形成して運転を開始したとしたら…。そのようなことは起きないと思いたいですが、そうでないのが「想定外」なわけですからあるかも知れませんよね。 その時の人類は、それを抑えこむ技術を身に付けているでしょうか。 それとも火星への移住計画を実行しているでしょうか。それとも…宇宙戦艦ヤマトがイスカンダル星へ放射能除去装置を取りに行くことになるのでしょうか(!?)。 この宇宙戦艦ヤマトのくだりは友人が冗談混じりに話したことですが、人が住めなくなった星に、いくら効率のいいエネルギーがあっても無意味ですから、 とりあえず、いまある使用済み核燃料の処理については、失敗や事故のないようにしていただきたいと思います。合わせて、ひとまずもうこれ以上作らないようにして欲しいと思っています。
2011年 8月11日 赤沢富士男
図・写真は、Wikipedia、中国電力サイトのものを使用しています
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