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放射線
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 福島県の小学校、幼稚園の被曝線量を年間20mSv(ミリシーベルト)に引き上げるという報道は衝撃的でした。国際放射線防護委員会(ICRP)が、一般人の許容線量は年間1mSv(ミリシーベルト)と言っているからです。 同時に政府や学者さんたちは、自然放射線量は世界平均で年間2.4mSv(ミリシーベルト)、場所によっては年間10mSv(ミリシーベルト)の場所もあるという説明も交えるので、ICRPがいう1mSv(ミリシーベルト)ってなんだ?と、 私のような凡人には訳がわからなくなって、なんだかごまかされたような気分になってしまいます。
 そこで、そもそも放射線というものがどういったものなのかを調べてみました。
2011年 7月 3日 赤沢富士男
■放射線とは…

放射線の種類  ざっくり言うと「生体を破壊する作用のある高エネルギー」となります。専門的には「電離放射線」と言うようです。
1. α線(アルファ線)
 たとえば、放射線のひとつ、α線は陽子2個、中性子2個の粒子線です。これはヘリウム原子核と同じです。ヘリウムガスを吸って声色を変えて遊んでても、放射線を吸って遊んでいるとは誰も言いません。 ヘリウムガスは電子2個が原子核を包んで安定した状態で存在しているからです。電子が包みきれない勢いでヘリウム原子核が飛び出すとα線という放射線になります。 α線はプラス電荷を持っていて電場、磁場で進路が曲げられます。紙や数cmの空気層で止められますが、電離作用が強いので内部被曝に要注意です。
2. β線(ベータ線)
 β線は高速で飛ぶ電子です。古いテレビに使われていたブラウン管の中も電子が飛んでいましたが、それくらいでは放射線とはいえません。 β線はマイナスの電荷を持つ粒子線で与えられたエネルギーがなくなるまで飛び続けます。β線は数mmのアルミ板や1cmのプラスチック板で遮蔽できますが、 その際γ線を出すので、γ線の遮蔽も必要になります。
3. 中性子線
 中性子は電荷を持たないので、原子核や電子の電荷の影響を受けず直進します。そこに原子核にあるとその性質を変えてしまう可能性が高いので、中性子だけは低速・低エネルギーであっても放射線扱いとなります。 中性子はとにかく原子核に当たるまで、そのエネルギーを失わずに直進します。中性子を遮蔽するためには、水(〜2cm程度)か分厚い(1m位)コンクリートが必要です。 普通のビルの中に隠れたぐらいでは中性子線から避難したことになりません。
4. γ線(ガンマ線)とX線(エックス線)
 γ線もX線はほぼ同じ放射線だと思って頂いていいと思います。γ線のほうが強いぐらいに考えてください。どちらも電磁波に含まれます。可視光も電磁波ですがこちらは放射線とは呼びません。 紫外線は皮膚癌の原因となると言われ、生体破壊作用がありますが紫外線を利用する生物もいますので、紫外線は放射線とは呼びません(紫外線は境界だといわれています)。
なんだかややこしいですが、γ線、X線は電離作用があり、生体を強く傷つけます。
5. まとめ
 まとめますと、放射線は生体を破壊する、とても怖いものだということです。基本的には細胞の遺伝子(DNA)を破壊して死に至らしめるか、正常な機能が働かなくなります。 ひとつやふたつの細胞が傷ついたくらいではすぐに修復できる能力を生命には備わっていますが、その能力を超える放射線を受けたとき、その障害度は深刻です。
■宇宙は放射線だらけ

ビッグバンのイメージ  宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発から始まります。そこは想像をはるかに超える超高温、超高圧の状態で、 最初にクォークと呼ばれる素粒子のスープから陽子や中性子、電子など、物質の元になる粒子が生まれます。それからおよそ30万年たってようやく最初に陽子1個と電子1個の水素原子(1H)が生成されますが、そこに中性子が当たり重水素(2H)になり、三重水素(3H)が生成されます。 三重水素(3H)はβ崩壊してヘリウム3(3He)になり、さらに中性子を捕獲してヘリウム4(4He)となって安定します。 宇宙創成初期の高温高圧の勢いで一部がリチウム7(7Li)、ベリリウム7(7Be)まで合成が進むようですが、このベリリウム7(7Be)はγ線を放出します。
 やがて、水素とヘリウムが集まって巨大な天体を形成し、自重で高圧になったその中心部では核融合反応が起こり最初の恒星(太陽)が誕生します。
太陽のX線観測写真  恒星の内部では水素原子(1H)の核融合反応でヘリウム原子(4He)が溜まっていきます。そのうちヘリウム原子(4He)の核融合により炭素原子(12C)、 窒素原子(14N)、酸素原子(16O)が次々に合成されていきます。この過程では放射性同位元素の窒素13(13N)、酸素15(15O)なども合成されます。 恒星が大きければ、酸素からさらに重い元素が合成されて最終的に鉄56(56Fe)が作られますが、この過程でも様々な放射性同位元素が合成されます。ちなみに恒星の核融合で合成される最も重い元素は ニッケル56(56Ni)ですが、β崩壊を経て鉄56(56Fe)に落ち着くので、鉄より重い元素は合成されないと表現されます。
かに星雲  鉄より重い元素は、恒星がその寿命を終えて大爆発(超新星爆発)を起こした時の超高温・超高圧の衝撃波で作られるといわれています。このときにウラン238(238U)よりも重い元素も一気に生成されますが、 重い元素は不安定なため、すぐに軽い元素へ移行します。こうした不安定な核種はα崩壊やβ崩壊を繰り返していきますので放射性同位元素として振舞うことになります。
 私たちの住んでいる地球はこのようにして出来た元素によって作られ、私たち生命もこうした宇宙の活動によって生まれてきました。 そうした重い不安定な元素のほとんどは地球の年齢45億年の間に消滅していきましたが、ウラン235(235U)のような半減期が長い元素も数多く残っています。 このように放射線は宇宙の活動とともにありますので、私たちは知らされていないだけで、身近なところに自然に存在しています。
■自然放射線

自然放射線(世界平均)
自然放射線の種類 年間線量(mSv/y)
宇宙からの宇宙線 0.35
大地放射線から 0.40
食物などから 0.35
空気中のラドンから 1.30
(1988年国連科学委員会報告)
 人間が原子力を扱うようになった以前から、もともとあった放射線で、世界の平均が2.4mSv/y(シーベルト/年)と言われています。 内訳は右の表のようになります。このうち「食物から」の0.35mSv/y(シーベルト/年)と「空気中から」の1.30mSv/y(シーベルト/年)を合わせた1.65mSv/y(シーベルト/年)は内部被曝になるそうなので、 自然放射線の外部被曝分は0.75mSv/y(シーベルト/年)ということになります。日本の平均は1.4mSv/y(シーベルト/年)と言われていますので、およそ半分(6掛け)くらいでいいのかなと思いますので、 外部被曝線量は0.4mSv/y(シーベルト/年)ということになります。発表される放射線量はこの自然放射線量を含みますので…単位に注意してください…0.046μSv/h(マイクロシーベルト/時間)を差し引いて考えなければなりません。 これを超える線量が自然以外(福島?)に由来することになります。これにICRPが定めている1mSv/y(シーベルト/y)を考慮すると、0.16μSv/h(マイクロシーベルト/時間)を超える線量を浴び続けないように注意しなければならないということになります。
地質から求めた日本の自然放射線量  もう少し細かい話をすると、地質の違いによって大地から受ける放射線量が変わります。日本地質学会のサイトから取ってきてしまいました(地図をクリックすると大きく拡大します)が、西日本は花崗岩が多いので高めになっています。 こうして見ると、さきほどの基準は東京の場合、0.13μSv/h(マイクロシーベルト/時間)くらいに厳しくしたほうがいいかも知れません。ちなみにこの数字は私のサジ加減です。悪しからず。
 ちなみに、原爆実験とか、原発、医療放射線等の影響で、少なからず人工の放射線が含まれるようになりましたので、自然放射線と呼ばず環境放射線という言い方をすることもあるようです。こういう言い方、なんだかごまかしに使われるようで、私はあまり感心しません。

写真はWikipediaに掲載されているものを使用しています
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