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万葉の世界(14)
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青山を 横切る雲の いちしろく 我と笑まして 人に知らゆな
青山を 横切る雲の いちしろく 我と笑まして 人に知らゆな

 この歌も大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいつらめ)の作品です。
 「我と笑まして 人に知らゆな」とは、『ご自分からニコリとお笑いになって、人に知られないでくださいな』という意味ですが、現代と違って、「私たち恋愛中」とおおっぴらにすることはなく、 むしろ二人だけのことにしておいて、それを外に出してしまうと、二人の愛の深さがどこかへいってしまうとさえ考えていました。だから「人に知られないで」というわけです。

 ところがその笑うさまを「青山を 横切る雲の いちしろく」と詠っています。ちょうど夏の入道雲が山の上にぱっと顔を出しているような・・・と言うのです。
 『あんなふうにハッと人に気付かれるくらいお笑いになって』というような感じです。二人の愛が逃げていくどころか、大伴坂上郎女が愛するひとがくれた笑顔を、大変喜んでいるように感じます。

 大伴坂上郎女は生まれもよく、資質も豊かで、教養もあり、歌の修練も積まれた方といわれ、女流歌人のひとりとして称されていますが、 「夏の野の 繁みに咲ける 姫百合・・・」にしても、この歌にしても、女性らしい奥ゆかしさを感じます。
 とくに女性の方には、男性よりも、この歌の心が響いているのではないかと思ったりします。


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