FujiPro 雑学館 - 雑学 -
万葉の世界(7)
トップページ雑学万葉の世界>万葉の世界(7)

たけぬれば たかねば長き 妹が髪 この頃見ぬに 掻きれつらむか
たけぬれば たかねば長き 妹が髪 この頃見ぬに 掻きれつらむか

 これは三方沙彌(みかたのさみ)という男性の歌で、園臣生羽(そののおみいくば)というひとのお嬢さんと結婚したんですが、まだ間がないうちに病気になってしまいました。
 昔は、最初のうちは夫婦は同居しないそうで、男性が女性のもとを通っていくという生活を続けます。ところが三方沙彌が病気になって、お嬢さんのところへ行けなくなってしまいました。
 この歌は、自分の新妻を思って詠んだものです。

 このお嬢さんはまだ若く、結婚したときにはまだ髪も短く束ね上げるほどではなかった。男性は、そんな初々しい新妻の髪を想い・・・

 『(一人前の女らしく)束ねればすぐほどけ、束ねないと少しばかり長い貴女の髪、この頃見ない間に、女らしく束ね上げただろうか』

と詠います。髪のことを歌っているだけなんですけれども、若い新妻のまだ初々しくも女らしい両面を感じ取って「会いたい」と想う切ない気持ちが伝わってきます。

人は皆 今は長しと たけと言へど 君が見し髪 乱れたりとも  それに対して新妻はこのように詠います。

人は皆 今は長しと たけと言へど 君が見し髪 乱れたりとも

 『(いいえ)まわりの人は、今はもう長い、束ね上げなさいと言うけれども、あなたがご覧になったまま、乱れてしまってもそのままにしておきますわ。』

 万葉のひとたちは「魂」を感じ取っています。「君が見し髪」そのままにしておくのは、三方沙彌が見てくれた髪、魂の残った髪をそのままにしておく・・・ということです。
 新妻もまた、男性が愛しくてたまらない。「君が見し髪」を大切に想うことは、男性の愛情を大切に想うことを詠っていることになるのです。

 なかなか会えない恋人への想いと似ていませんか?(^^ゞ
 

<<-TOP <-RETURN Copyright(c) 2004 FujiMan Production All Rights Reserved